スポーツ選手の膝の大怪我、前十字靭帯(ACL)損傷とは
前十字靭帯(ACL)断裂は、日本では年間20000~30000件発生していると言われており、スポーツで受傷する膝のケガの中でも非常に多くみられます。
受傷原因としては、バスケやバレー・サッカーなどのストップや、ステップ・カット動作(方向転換動作)・ジャンプの着地時に受傷するケースが多いです。<非接触型損傷>
また、ラグビーやアメリカンフットボールなどで脚にタックルを食らったときなどにも多く見られます。<接触型損傷>
接触型損傷より非接触型損傷の方が2倍以上も多いと言われています。
また女子選手の方が男子選手に比べて2~8倍発症リスクが高いと言われています。
前十字靭帯(ACL)は膝の関節の中にある靭帯で、膝の安定性に非常に重要な役割を担っています。
そのACLが損傷されると膝の安定性が失われ、歩行中などの日常生活でも膝が“ガクッ”と抜けてしまうような『膝くずれ』が頻繁に起こってきます。
関節の中にある靱帯なので一度断裂してしまうと自然治癒が難しく多くの場合で手術による治療が行われます。
前十字靭帯(ACL)とは
上の図は、膝を前から見たものです。
膝関節を支えるために4つの靱帯があります。前十字靭帯は関節の中にある靱帯で、脛骨(すねの骨)が前に出ないようにストッパーの役割をしています。また関節の中にあるもう一つ靱帯、後十字靭帯とクロスしていることで、膝をひねる動作のときに膝が崩れないように止める役割を担っています。さらに前十字靱帯は、膝の位置を感知する言わば、膝の「目」とも言われています。
前十字靭帯損傷の症状
受傷直後から2、3週間くらいまでは膝の激痛と腫れ(血腫)がみられ膝の曲げ伸ばしが出来ない(可動域制限)が出てきます。
半月板損傷や骨挫傷、骨折などの合併損傷がない場合は靱帯が切れているにも関わらず2~3週間で痛みが落ち着きます。または消失します。
※受傷直後に病院に行かれた場合、または痛みが落ち着くのが早く病院に行かれなかった場合に前十字靭帯損傷が見逃されてるケースが非常の多いです。
前述した通り、急性期(受傷後2~3週)を過ぎると不思議と痛みや腫れ・可動域制限が消失するケースが多いです。この時期を過ぎるとスポーツ中や日常生活でも突然膝が“ガクッ”と抜けるような「膝くずれ現象(giving way)」が起こってきます。
これは、前十字靭帯のストッパーとしての役割が機能していないがために起こる“脱臼”現象です。
前十字靭帯損傷の原因
相手にタックルを食らったなどの接触型の損傷は事故に近く避けにくい部分はありますが、スポーツ中のストップや、ステップ・カット動作(方向転換動作)・ジャンプの着地時に受傷する非接触型損傷はこれら動作中のknee-in toe-out(直訳ですが膝が内に入ってつま先が外を向く肢位)が原因となってきます。
動作中のknee-in toe-outがコントロールできない以外に、バランス能力不足・体幹の筋力不足・扁平足などのアライメント異常・これらがコントロールできなくなる疲労なども挙げられます。
前十字靭帯損傷のサポーター
前十字靭帯損傷用の膝サポーターもありますが、日常生活レベルならともかくサポーターをつけていてもスポーツとなると「膝くずれ現象(giving way)」が起こることが多いように感じます。
前十字靭帯断裂を手術をしないでそのままにしておくとどうなるのか
ケガを起こして3週間程で痛みや腫れがひいて、歩きやすくはなりますが治療をしないで放置しておくと、頻繁に膝くずれを起こすようになります。また膝を支えていた前十字靱帯が損傷した状態で膝の曲げ伸ばしを繰り返し行うと、膝関節がうまくかみ合わない状態となり、半月板損傷を引き起こしてしまい、膝に水が溜まったり慢性的な痛みを感じたりすることもあります。なので、前十字靭帯断裂と診断されると第一選択肢として再建手術が考えられます。しかし、患者さんの立場では、色々な事情や不安があり、
すぐに手術しないといけないのか、それとも、手術しないで経過を見てもいいのかなど、
自分の場合は、いったいどうしたらいいのか、非常に迷う事が多々あることも事実だと思います。そういった場合には、ぜひご相談いただき、
ご自分に一番合った選択をしていただきたいと当院では思っております。
前十字靱帯損傷の件でお悩みをお持ちの方は、一度ご相談ください!