スポーツ選手の股関節の前方(鼠径部)の痛み【大腿骨頚部疲労骨折】
スポーツ選手における疲労骨折の中でも大腿骨頚部の疲労骨折は発生頻度も少なく、比較的珍しい疾患です。
ですが、大腿骨の疲労骨折が起こらないわけではなく見過ごしていると完全骨折や偽関節、大腿骨頭壊死など重篤な疾患に発展し手術となることもあるので決して軽く考えてはいけない疾患です。
また、疲労骨折全般に言えることですが、痛くなってから2週間~長ければ4週間ほどはレントゲン検査で写らないこともあるので一度のレントゲンで問題なかったからと言ってもしばらく注意が必要です。
大腿骨頚部疲労骨折とは
左の赤丸が股関節です。
大腿骨の骨頭という丸い部分が、骨盤の臼蓋という窪みにはまり込むような形態をしています。
右の青丸が大腿骨です。
股関節から膝関節にかけて縦に長い太ももの骨です。
青丸で囲んだカーブしてくびれている部分
ここが大腿骨頚部です。
この部分が疲労骨折を起こすのが大腿骨頚部疲労骨折です。
陸上やバスケットボール、バレーボールの選手に多くみられることから、走る動作にジャンプ動作が加わるスポーツに多いと考えられます。
高齢の方は転倒によってこの部分を骨折することがあります。
転倒による一発外力の骨折なので、大腿骨骨折といい、手術になることの多い骨折です。
大腿骨頚部疲労骨折のタイプ
大腿骨頚部疲労骨折は大きく分けて圧迫型と牽引型の2種類に分けられます。
圧迫型は発見・診断は難しいが比較的早く治癒が見込める。
牽引型は早期発見・診断はしやすいが、骨折部に離解力がかかるため治癒には時間がかかると言われています。
大腿骨頚部疲労骨折の原因
疲労骨折全般は患部に繰り返し刺激が加わり、回復以上に骨に刺激が加わり続けることで起こります。
さらに大腿骨頚部疲労骨折の場合は、練習による筋疲労(特に中殿筋と言われています)によって大腿骨頚部への牽引力が増加する。
また、筋疲労によって関節への衝撃吸収作用(緩衝作用)が低下し大腿骨頚部への衝撃が増大する。
さらに、大腿骨の解剖学的特徴によって大腿骨頚部上方に牽引力・大腿骨下方に圧迫力がかかり疲労骨折を起こすと考えられています。
女性アスリートに多いことから、ホルモンバランスの乱れによる骨粗鬆症の関与も考えられています。
大腿骨頚部疲労骨折の症状
大腿骨頚部疲労骨折の初期症状は運動時や運動後の股関節の前方(鼠径部)の痛みで、安静にしてたら痛みはありません。
ここで我慢していると疲労骨折が進行し(中期症状)安静時の痛みや、歩く・しゃがむ・階段昇降など日常生活動作にも支障が出てきます。
股関節内旋時の痛みがある場合もあります。
大腿骨頚部疲労骨折の治療
手術やベットによる安静(体重をかけないことを徹底)や松葉杖による免荷(体重負荷を減らす)など様々な報告がありますが、早期に発見し治療を開始できたもので3ヵ月のスポーツ休止と言われています。(段階的に患部外トレーニングなどを行います)
中期症状で安静時痛のあるものは安静時の痛みや日常生活動作の痛みが改善するまで、松葉杖など免荷を考慮しつつ安静時痛が取れるのを待ちます。
進展期で骨折部の拡大(離解)や転位がみられる場合は即手術となる場合もあります。
大腿骨頚部疲労骨折まとめ
- 大腿骨頚部疲労骨折は発生頻度は少ないが、治療が遅れると手術になる場合もあり早期の発見治療が重要です。
- スポーツをしている女性に多い傾向があります。
- 初期の疲労骨折でも約3ヵ月スポーツ休止する場合があります。
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