スポーツ選手の股関節(鼠径部)の痛み【恥骨疲労骨折・恥骨骨炎・恥骨下枝疲労骨折】
スポーツ選手の股関節前面(鼠径部)の痛みで有名なもので『グロインペイン症候群(groin pain syndorome)』という疾患概念があります。
恥骨疲労骨折・恥骨骨炎・恥骨結合炎や恥骨下枝疲労骨折は『グロインペイン症候群(groin pain syndorome)』の中の一つとして考えていただいて結構です。
さらに、恥骨疲労骨折・恥骨下枝疲労骨折・恥骨骨炎・恥骨結合炎は同義として扱われていることも多いです。
鼠径部・恥骨とは
恥骨疲労骨折・恥骨骨炎・恥骨結合炎・恥骨下枝疲労骨折の原因
この恥骨部には体幹からは腹直筋、下肢からは内転筋や薄筋などたくさんの筋肉が集中して付いています。筋肉が上下に引っ張り合う力が働いて恥骨部に負担がかかります。
さらに、骨盤は一塊の骨ではなく左右に分かれていて、若干ですが別々の動きをします。
筋肉の引っ張りに恥骨結合部がこすれるような剪断力がかかることも原因の一つと考えられます。
ここに、柔軟性不足による可動域制限・疲労などによる筋力低下や筋力不足からくる安定性の低下、全身を連動させて動かす協調性の低下がさらに恥骨部の負担を増大させる原因と言われとぃます。(恥骨に限った話ではありませんが)
恥骨疲労骨折・恥骨骨炎・恥骨結合炎・恥骨下枝疲労骨折の症状
主に運動時の痛みです。
ダッシュやジャンプ、サッカーのキックなどの痛みです。
恥骨疲労骨折三徴候
- 運動時(競技中)の鼠径部痛
- positive standing sign 陽性
- 恥骨下枝に限局した圧痛
恥骨疲労骨折・恥骨骨炎・恥骨結合炎・恥骨下枝疲労骨折のレントゲン・MRI
1枚目のレントゲンとMRIは同じ方のものです。
右恥骨疲労骨折(向かって左)です。
左の恥骨結合部に比べて、右の恥骨結合部がギザギザしています。
これを、『骨透亮像』とか『不整像』と言います。
下の画像がMRIです。
レントゲンだと、恥骨結合部の骨透亮像くらいしか見られませんが、MRIだと恥骨の中の方まで白くなっているのが分かります。
この白いのは骨が腫れている・炎症を起こしているということで『恥骨疲労骨折』『恥骨骨炎』の所見となります。
左恥骨疲労骨折です。(向かって右側)
右に比べ恥骨結合の部分に骨透亮像が見られるうえに、真ん中あたりに横に走る骨折線が見られます。
疲労骨折が顕在化して骨折線がハッキリしてきたものと考えられます。
左恥骨下枝疲労骨折です。
恥骨結合部に左右差は見られませんが、恥骨下枝の骨が盛り上がっている(膨隆)のが分かります。
スポーツをしていると、骨の部分にストレスがかかり損傷と修復を繰り返します。
損傷に修復が追い付かなくなった場合に疲労骨折となります。
このレントゲンは疲労骨折の骨の修復過程で膨隆しています。
恥骨疲労骨折・恥骨骨炎・恥骨結合炎・恥骨下枝疲労骨折の治療
病態が骨の炎症や疲労骨折なのと、場所が場所なので局部に直接治療というのはあまりないんですが、治癒促進などに酸素カプセルがいいと思います。
原因の一つとされる“可動性”“安定性”“協調性”の改善として、スポーツ整体で姿勢や可動域の改善・パーソナルトレーニングで安定性や協調性に対してもアプローチできます。
余談ですが、左右の恥骨疲労骨折を抱えながら、鍼灸治療で内転筋を緩めたり調整しスポーツを休まずにタイムを伸ばし続けた短距離ハードルの女子アスリートもいます。
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