【成長痛】膝や踵(かかと)など足の痛みと対処法
狭い意味での成長痛は幼児期から学童期(3~10歳)のお子さんが昼間の疲労などに精神的なストレスや不安感などが重なって起こる“心因性疼痛”と考えられています。痛む場所は太ももや膝、ふくらはぎや足首が多く、基本的に痛みはあっても腫れや熱感、発熱などはありません。しかし、中学生や高校生になっても痛んだり、腰や股関節が痛い場合は骨端症やその他のスポーツ障害が疑われます。
下記ではこころの問題に起因する『狭い意味での成長痛』と小学校高学年くらいから中高生に起こるスポーツ傷害や骨端症としての『広い意味での成長痛』とお話します。
【成長痛とは】
成長痛とは、夕方~寝る前や夜中に痛みや、だるさなどが出る症状で、痛みは30分から1時間ほどで収まり、翌朝には全く痛みなど感じなくなっていて、何事もなかったかのように走り回ったり飛び跳ねているのですが、時には激しく泣いてしまうほどの訴えもあるので親御さんは非常に心配されると思います。
痛む場所が日によって変わることも特徴と言われていますが、多くの場合は下肢(太ももや膝、ふくらはぎ)に訴えが多いと言われています。発症は3~10歳くらいまでに起こることが多く、月に1~2回だったり、週に1~2回だったりと不定期に訴えを繰り返します。
【成長痛の症状】
・発熱などの全身症状や痛む場所(局所)の腫れや熱感がなく、あしが痛いことを除くと元気である
・痛みはさすってあげると自然に治まり、通常1時間以内で痛みがひく
・痛む場所が日によって変わる
・夕方から夜に痛むことが多く、昼間は元気に走り回っている
【成長痛の原因】
・精神的な不安感
経験的によくあるのは、「弟や妹が出来て自分にかまってもらえる時間が減った」とか、「母親が働きだした」などの家庭環境の変化(特にお母さんと接する時間が減った)があります。基本的にこういった場合は、甘えたい、かまってほしい、自己主張したいなどの心の葛藤や心理的な欲求が痛みを引き起こしているので、さすってあげたり、湿布してあげるなどの手当てや、抱っこして話しを聞いてあげるなど、少し甘えさせてあげると安心して症状が治まることが多いです。「甘え」と言っても決して仮病ではなく『心因性疼痛』は本当に痛みを感じていることを理解してあげて子供の気持ちを上手に受け止めてあげてください。
時には激しい痛みに対しての不安もあります。そしてその不安感から更に痛みを強く感じてしまうこともあるので、とにかく安心させてあげましょう。成長痛は繰り返し起こることも多いので、「また痛いの?」とか「すぐ収まるから我慢しなさい」とは言わず、子供の訴えを無視せずに積極的にスキンシップをとってあげてください。
また、子供も学校や幼稚園など社会に出ているわけですから、大なり小なり我慢をしたりストレスを感じているはずです。ですので、学校での出来事や良かったこと、イヤだったことなどを聞いてあげる対話の時間を持つのも重要です。
このような心の葛藤や心理的な欲求が原因の場合には、精神的な成長による症状も治まりますし、身体の異常ではありませんので、心配は必要ありませんよ。
・昼間の活動による疲労
子供は筋肉や骨・関節が未完成であるにも関わらず、非常に活発です。幼稚園や学校で走りまわったり、体育で動きまわったり、毎日かなりの運動量をこなしていることもあります。そのために疲れがたまって、夜になると痛みを起こすとも言われています。
以前は骨の成長によって靭帯や筋肉が引き伸ばされるために起こると考えられていましたが、今は身体的・精神的な様々な原因が考えられています。成長痛という呼び名のせいで認識を誤っている方も多いのですが、骨の成長とは無関係です。
【成長痛かな?と思った時の注意点】
・熱を測る
発熱が見られる場合は、感染症やその他の炎症性疾患が疑われます。
・痛い場所を観察する
痛む場所が腫れている・熱を持っている・痛む場所がピンポイントといった場合はその部分での炎症や痛みが起きていると考えられます。
この時期の子供にしか起こらない疾患というのもたくさん存在しまし、中には子供の将来にもかかわるような疾患もあります。「成長痛だろう」ではなく、本当に異常が起こってないか真剣に考えてあげてください。本当にこころの問題に起因する痛みであればそれだけでも良くなるかもしれません。
【成長痛かな?と思った時の対処法】
・とにかく痛みについて受け入れて心配する
・手当てをしてあげる
・病院に連れて行ってあげる
【アスイクでの成長痛の治療】
アスイクでは成長痛以外の疾患ではないか、徹底的に検査し鑑別します。
そのうえでこころに起因する痛みと判断した場合
・自律神経を調整する
・特に対話を中心として接する
といった治療を行います。
こういった子供さんは、暗い顔をして来院されることが多いので、とにかく笑顔で帰っていただけるように心がけています。さらに親御さんにもアスイクでの見解を説明し、ご自宅での接し方など協力を仰ぎます。
【広い意味での成長痛とは?】
広い意味で成長痛というと10歳過ぎたくらいからスポーツレベルや運動強度が上がりだしたときに、組織的に脆弱な成長軟骨(骨端線)へ負担がかかって起こる障害『骨端症』(有名なものでは膝のオスグット病やかかとのシーバー病など)や、骨が出来上がっていないうちに起こる『成長期の疲労骨折』成長期腰痛分離症、野球肩や野球肘などの『骨端線損傷』や骨軟骨障害の離断性骨軟骨炎なども入ります。
【広い意味での成長痛、骨端症】
Scheuermann病(脊椎骨端症) (ショウエルマン病) |
学童期から思春期に起こる脊椎の骨端症で、脊柱後弯や棘突起(背骨の出っ張り)の圧痛が見られる。いわゆる「猫背」とは違い、姿勢性のものではない。 うつ伏せになっても、背骨が後弯しているまたは反らすことができない場合はショウエルマン病の可能性があるので要注意。 |
Panner病(上腕骨小頭骨端症) (パンナー病) |
上腕骨小頭の無腐性壊死。症状は疼痛、腫脹、可動域制限。発症年齢10歳以下。 成長期(12歳頃)から発症する外側型野球肘の離断性骨軟骨炎と類似するので鑑別に注意を要する。 |
Dietrich病(中手骨骨端症) (デイートリッヒ病) |
デイートリッヒ病は中手骨骨頭部に起こる骨端症で詳しい原因はわかっていませんが、先天的な中手骨頭への栄養血管の欠損またはスポーツ(投球など)による中手骨頭部への繰り返しのストレスにより中手骨骨頭部の血流障害が起こる壊死性疾患と考えられている10代後半から20代に多い疾患と言われています。症状はMP関節部(握りこぶしの頂点となる指の第3関節)の痛みや可動域制限です。 |
Perthes病(大腿骨頭骨端症) (ペルテス病) |
ペルテス病は4~7歳の男の子に発症しやすい(男女比6:1)大腿骨骨頭骨端部の血流障害による壊死性疾患です。骨頭壊死の修復には2~3年かかると言われており早期発見・早期治療が重要です。壊死による圧壊が進行すると変形性股関節症を発症します。 症状は股関節・膝関節・太ももの痛みや運動痛・跛行(びっこ)・股関節の可動域制限などです。※痛みがないまたは非常に軽い方もおられるようです。 |
有痛性分裂膝蓋骨(膝蓋骨上外方または外側骨端症) |
分裂膝蓋骨は骨化核を覆う成長軟骨部分の牽引損傷で10歳前後に多く見られる膝のスポーツ傷害です。 症状は運動時や深く曲げた時の膝蓋骨の痛み、圧痛などがあります。初期の成長軟骨部分のみの損傷ではレントゲンでは写らないこともあるので要注意です。 以前は分裂膝蓋骨は先天性というのが通説でしたが、近年では膝蓋骨の成長終了(13~14歳)までで早期発見ができれば治癒が可能と考えられています。 |
Sinding-Larsen-Johensson病(膝蓋骨下端骨端症) (シンディングラルセン・ヨハンセン病) |
膝蓋骨下極の膝蓋靭帯の牽引による骨端症で膝蓋骨が下極に副骨化核を形成する時期に過剰なストレスによって発症する骨軟骨障害です。 10~11歳の成長期より少し早い時期にお皿の下に見られ、運動時やしゃがみ込み・階段など深く曲げて力がかかった時に痛みます。 |
Osgood-schlatter病(脛骨粗面部骨端症) (オスグットシュラッター病) |
オスグット病は成長期のスポーツ障害の中で代表的な膝の疾患です。病態は脛骨粗面(すねの上の出っ張り)の骨端症で、成長過程で脛骨粗面部が力学的に弱くなる12歳前後に発症します。症状は脛骨粗面部の圧痛や運動時や運動後の痛みです。一般的には予後もよく脛骨粗面部の成長終了とともに症状はなくなると言われていますが、脛骨粗面部の隆起(遺残変形)を残してしまうと痛みが遷延する場合があるので治療も重要になってきます。 |
Blount病(脛骨骨端症) (ブロント病) |
ブロント病は脛骨内側の骨端線の成長障害により内反膝(O脚)を呈する疾患。1~3歳に発症する『幼児型』と8~14歳に発症する『年長型』の二種類あるが大半が両側性の幼児型である。 肥満・低月齢での歩行開始・関節弛緩による動揺膝歩行によって成長軟骨に繰り返しストレスがかかることが原因と言われている。 |
Freiberg病(中足骨骨端症) (フライバーグ病) |
フライバーグ病は中足骨頭骨端核に起こる無腐性壊死で第2中足骨頭(足指の付け根の関節部分)に発症することが多い。(次いで第3中足骨に多く第4・5中足骨にも起こると言われている。) 思春期(10代)の女性に多い疾患で、微小な外傷やハイヒールなどの靴による負荷が原因となる。 症状は足指の付け根の腫れや痛み、歩行時(特に踏み返し)の痛みがあります。 |
Köhler病(舟状骨骨端症) (ケーラー病) |
ケーラー病は舟状骨の血流障害による無腐性壊死で、3~8歳の男の子に発症しやすい疾患です。舟状骨に繰り返しストレスがかかることで舟状骨への血流障害(栄養障害)が起こり発症すると考えられています。 症状は舟状骨上(足の甲)に腫れや熱感・圧痛、跛行(びっこ)が認められます。 |
Sever病(踵骨骨端症) (シーバー病) |
シーバー病は踵骨の骨端核に生じる骨端炎でスポーツなどをしている10歳前後の活発なお子さんによく見られます。 踵骨の骨端核がアキレス腱と足底腱膜による牽引と固い地面やスパイクのポイントによる突き上げによって起こると考えられています。 症状は運動時の踵の痛みや踵骨後方突起の圧痛が見られます。保存療法にて予後良好な疾患だが、痛みの強い場合は治療が長期にわたる場合もある。 |
Iserin病(第五中足骨基部骨端症) (イセリン病) |
イセリン病は第5中足骨粗面部(足の外側中央付近の出っ張りで足の小趾の延長線上)に見られる骨端症です。10歳前後のスポーツなどをしているお子さんに多く見られます。短腓骨筋腱による第5中足骨粗面部の牽引により発症します。症状は運動中や運動後の第5中足骨粗面部の痛みや圧痛、足関節内反時(足首を内に捻るとき)の痛みです。 受傷機転によっては、Jone's骨折(ジョーンズ骨折)という疲労骨折や、第5中足骨基部骨折の場合もあります。 |
【広い意味での成長痛、スポーツ傷害】
成長期腰椎分離症 |
成長期に起こる腰椎椎弓根部の疲労骨折。 小中学生で2週間以上続く腰痛の45%が腰椎分離症だったとの報告もあります。また、低年齢で発症する腰椎分離症はすべり症を発症する可能性が高いので要注意です。 |
膝離断性骨軟骨炎 |
子供の柔らかい関節軟骨に繰り返し膝の屈伸とねじれのストレスがかかることで関節軟骨が徐々に剥がれ離れていく疾患。早期に発見し治療しないと、関節軟骨が徐々に剥離・脱落し、関節障害のためスポーツ活動の断念や、後に発生する関節症の原因となる。 スポーツをしていない子供に発症することもあります。 |
上腕骨近位骨端線離開 |
野球をしている子供に多いことからリトルリーガーズショルダーとも呼ばれてます。肩の骨端線に投球のねじれと牽引のストレスが繰り返しかかることで発症します。 |
上腕骨内側上顆骨端線離開 |
内側型野球肘とも呼ばれてます。投球時にかかる肘の外反ストレスと前腕屈筋の作用で肘の内側に骨端線に損傷をきたします。 |
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎 |
外側型野球肘とも呼ばれ、膝の離断性骨軟骨炎と同じように、子供の柔らかい関節軟骨に繰り返しストレスがかかることで関節軟骨が徐々に剥がれ離れていく疾患。早期に発見し治療しないと、関節軟骨が徐々に剥離・脱落し、関節障害のためスポーツ活動の断念や、後に発生する関節症の原因となる。 |
肘頭骨端線離開 |
後方型野球肘とも呼ばれ、投球時の外反ストレスとボールリリースからフォロースルーにかけての上腕三頭筋の牽引によって肘頭(肘の後ろの出っ張り)の骨端線が損傷します。 |
【さいごに】
本ページではあえて、【狭い意味での成長痛】と【広い意味での成長痛】と区別をしています。
というのも、心因性疼痛としての成長痛であれば基本的には親御さん以上に対処してあげられ人はいないでしょうが、広い意味で骨端症や成長期のスポーツ傷害などを含めると、中には看過できない疾患も含まれていて“治療のタイミングが今しかない”場合もあるからです。
心配な時はひとりで何とかしようとしないで迷わず専門家に相談することをおすすめします。
コメントをお書きください